憎しみを越える希望へ~Pluto

日々のエトセトラ・本や映画の話

こんにちは。
神奈川・相模原の里山(相模湖)で自然農を営む「すどう農園」です。

12月14日に「さとやま農学校2023」の4コースすべてを修了しました。
おかげさまで10年たちました。
まったくの手探りで始めた農業体験でしたが、あっという間の10年でした。
改めて、ここまで一緒にかかわってくださった皆さんに、いま心から感謝を申し上げます。本当に愉しい時間を過ごさせていただきました。今年の猛暑のような苦労などもありますが、楽しさに比べたら大したことではありません。なので、もうしばらく「さとやま農学校」を続けていこうと思います。どうぞ皆さんもご一緒ください。

憎しみは何も生まないけれど

ホッと気が抜けるなか、Netflixで「Pluto」の最終回を観ました。
浦澤直樹さんから手塚治虫へのオマージュとして現代に向けられたメッセージなのでしょう。ちなみに私は中学生の頃に「ブラクジャック」と「火の鳥」を溺れるほど読みました。「Pluto」は手塚作品の「鉄腕アトム」に出てくる同名のロボットをモデルにしたものですが、アトムは僕よりも上の年代の愛読だったかな。なので原作は読んでいないのですが、浦澤さんの「Pluto」の中で「憎しみは何も生まない」というセリフが幾たびも繰り返されました。いま進行中のイスラエルによるパレスチナでの虐殺がかぶってきます。
 同時に読んでいる雑誌「世界」の巻頭の特集では「実はヒトラーは勝ったのかもしれない」という言説が紹介されていました。ヒトラーがナチスを使って流布した民族浄化という概念が、あろうことかホロコーストを体験したユダヤ人の作った国によって占領地への虐殺として再現されている。そのことを差して「これはヒトラーの勝利だ」とする皮肉な見方なのだそうです。
 そうなると「憎しみは何も生まない」どころか「憎しみは憎しみを生む」ことになります。30年前のオスロ合意も踏みにじられたいま、もう絶望しかないのでしょうか。考えるほどに辛くなるから、やっぱり私は、この寒空の下ですが、一人で静かにクローバーの種などまき、今日もこれから畑で収穫をしてダイコンやカブや、あれこれを某所の「こども食堂」さんにお渡しします。
 世界中に渦巻く憎しみを、自分では直接どうすることもできないけれど、せめて小さくとも「希望につながる何か」を種に託して育てて届ける。そうして何かが生まれてくればと思うのです。
 ニュースを見るほどに胸が潰れそうな想いの皆さん。これから寒くなると、もっと身も心も寒く辛くなるかもしれません。そんなときは、そんなときこそ土です。土に触れるのが何よりです。風は冷たいけれど土の上では春を待つ草たちがひっそりと息づいています。来年はまたどんな人たちと出会えるでしょうか。世の中は憎しみばかりが満ちているわけではないのだと、そんな当たり前のことが理屈抜きで落ちてくる場所を来年も続けていきます。

「自給のための自然農を学ぶ・さとやま農学校2024コース」



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